平成14年度教員1日研修実績報告


@日進精機株式会社 平成14年7月31日(水) 13:30〜17:00

講演テーマ:「ものづくりと企業経営」」
講師:取締役社長 加藤忠郎氏
参加者:教員30名
同席者: 東京都教職員研修センター 研修部現職研修課 指導主事 阿字宏康氏
多摩起業家育成フォーラム 老川多加子氏

 研修は3部構成からなり、第1部ではビデオによる企業概要の紹介に続いて、代表取締役社長加藤忠郎氏が「ものづくりと企業経営」と題して講演を行った。第2部では30名の教員が3つのグループに分かれて工場内を見学し、第3部では加藤氏が教育とものづくりとの関連について講演した後、質疑応答を行った。
 同社は1957年創業以来、金型精密加工技術の機械化・近代化を進め、世界屈指の技術水準を誇る。製造業の空洞化が進む中、明確な経営理念と優れた技術を維持し、グローバル化・ネットワーク化に対応することで国内外に確固たる地位を築いている。同質の物を一度で大量に、しかも安価に供給することを可能にした金型や、大学と共同で開発し2000年に発明大賞特別賞を受賞したCNCパイプベンダーを見学し、誤差を1ミリの千分の一単位に収める技術を目の当たりにした教員からは、その仕組みや需要について質問が活発に交わされた。
 また同社では、年少時よりものづくりに興味を持ってもらえるようにと小中学生の工場見学を積極的に受け入れる他、産官学の共同開発を進めるなど教育現場との協同を活発に行っている。その一方で、かつて大半を占めた中卒・工業高校卒の新入社員は昨今の進学率上昇と工業高校の生徒のものづくりへの関心・意欲の低下でほとんど姿を消し、大卒・高専卒が主流になっているといった変化が紹介されると、教員からは工業高校の今後のあり方やものづくりに向けて高校生に何を学ばせればよいのかといった生徒の進路を考える質問が相次いだ。

〔質疑応答(一部)〕
Q1. 工業高校で教えているが、生徒にどういったことを重点的に教えていくべきか?
A1. テストの点ではない。反射神経というか、スポーツをやっているとものづくりがうまかったりする。ものづくりに広く興味を持たせることが一番重要だ。
Q2. 工業高校の今後のあり方は?
A2. 事業所のある長野県飯田市の例で考えると、別にものづくりが好きなわけではなく普通の高校に入れないからという理由で工業高校に入って来る。ものづくりが好きで入ったという子がもっと増えればいい。教育制度自体、欧米のように若い頃から多少苦手な科目があっても好きなことを伸ばしていけるような制度になる必要がある。

A東京中小企業投資育成株式会社 平成14年8月1日(木) 13:30〜17:00

講演テーマ:「投資先企業に見る最近の創業者像」
講師:常務取締役 小野寺照雄氏
参加者:教員36名
同席者: 東京中小企業投資育成株式会社 審議役 営業開拓・審査担当 渋谷章氏
東京都教職員研修センター 研修部現職研修課 山田勝基氏
多摩起業家育成フォーラム 竹内利明氏

 中小企業や創業まもないベンチャー企業に投資し、企業の育成や新規産業の創出に貢献する同社の研修では、自分で起業しようと構想を練り会社を経営していける人材の育成や、社会全体の中小企業に対する意識改革の必要性が訴えられた。特に、日本では欧米に比べて「自分で何かを始めたい」と考える子供が絶対的に少なく、政府が起業支援の制度を作るだけでは新規産業育成は前進しない、したがって、教育における人材育成から取り組む必要がある、という小野寺氏の主張には、講演後教員から多くの意見が寄せられた。
 また、同社の投資実績から見た「成功期待の高いベンチャー経営者例」の紹介では、ベンチャーが成功するにはいくつか傾向があり、事業意欲があり経営能力のある人と、その分野に高い専門性を持つ人との出会いが成功を導いた例や、ニーズを良く知り先が読め安定性の高い経営をできる大企業からの独立組の例、安定性はないが冒険をして収益をあげていく若者の起業例などが紹介され、いずれの中小企業も「この分野では世界一」という高い意識を持っていることが説明された。投資育成という側面から多くの経営者を見てきた小野寺氏の講演は、産業界が必要としている人材を知る上でも示唆に富む内容であった。

〔質疑応答(一部)〕
Q. 「人に使われたくないから社長になりたい」という生徒は見てきたが、何かを作ろうと か育てたいという気持ちは全くない。そういった気持ちを育てていくには教員として 何ができるか?また、講演を聴いて起業には出会いが大切、同志を募ることが鍵だと 感じたが教員はチームを組むことが苦手、また生徒同士のチームワークを育てていく 難しさも感じている。
A. (小野寺氏).ある大学の学生3人が、学生時代から一緒に会社を興そうと決め、まず各々 就職し3年後にお金を集めて起業した例がある。起業にはこうした用意周到さが必要。また、社長というのは何か非常に熱中できるものを必ず持っている。子供の中に、そういった何か一つを見つけてあげることが大切ではないか。また、チームワークは相手の長所短所を良く分かっていることが必要で、自分の欠点を補ってくれる人と出会えると成功するという面がある。
A. (竹内氏).子供は自分の取り得を自分で知る必要がある。欠点は親も先生も指摘するか ら分かる。夢中になっている集中力を伸ばしていくことも必要だ。

Bダイヤモンド経営者倶楽部 平成14年8月6日(火) 13:30〜16:30

講演テーマ: 「"志"が考え方を変え、行動を変え、そして人生が変わる
             〜仕事(人生)=能力×考え方×熱意〜」
 講師:株式会社日鳥大和代表取締役 齋木幸次氏
「前向きに耐える〜問題解決のために一歩前に出る〜」
 講師:株式会社リペアホームサービス代表取締役 尾形憲勇氏
参加者:教員39名
同席者: ダイヤモンド経営者倶楽部 代表取締役 落合昭人氏
株式会社日本未公開企業研究所 顧問 知久信義氏
株式会社ダイヤモンド社 開発事業局企業ネットワーク編集部
                       編集長 金子浩昭氏
日刊工業新聞 編集局中小企業部 記者 斎藤真由美氏
東京都教職員研修センター 研修部現職研修課 小宮恭子氏
多摩起業家育成フォーラム 竹内利明氏

 ダイヤモンド経営者倶楽部は中堅企業の経営者交流組織として1993年に立ち上げられ、会員である経営者向けのセミナーや研究会、懇親会などを企画・運営し、ビジネスのネットワーク作りから様々な実績を生んでいる。代表取締役落合昭人氏による同倶楽部の紹介の後、会員である齋木幸次氏、尾形憲勇氏がご自身の起業家人生をふり返って講演を行った。
 美容を通して日本社会に生活の豊かさを提案しようと日鳥大和を設立した齋木氏は、ちょっとした心の持ちようが生き方を変える力を持っていることをご自身の歩みの中から学び、何かに対して志を非常に強く持てば、必ず結果につながるという信念を得た。世界トップの理容室を見て回り、明確なビジョンと具体的な目標の設定が不可欠と感じ、世界一の店に匹敵する店を1000店舗出すという強い志を持って活動している。
 株式会社リペアホームサービス代表取締役の尾形氏は高校卒業時に「30歳になったら必ず起業しよう」と心に決め、紆余曲折を経た後、世の中がどのようになっても需要があり、影響を受けない事業をやりたいとの思いから靴修理のチェーン店を展開する現在の会社を設立した。人生の苦難を乗り越え、本物が分かり他人の痛みが分かる心の豊かな素晴らしい人生を送ってきたという実感を得られたと語った。
 両者に共通するのは強い志と豊かな人生を追求する思いと、失敗を「いい経験をした」ととらえて次へ生かせる強さであり、それが起業家精神と結びついて確実な成果を生んでいる。参加した教員からは起業への具体的な準備や人生の契機や失敗について、もっと聞かせてほしいという意見が出され、また、具体的な人生の歩みに触れて聞き入る姿が多く見られた。

CNCAコンサルティング株式会社 平成14年9月10日(火) 13:30〜17:00

講演テーマ:「成功した社会人と学生の意識の相違点」
講師:代表取締役 石井美鈴氏
参加者:教員11名
同席者: 東京都教職員研修センター 研修部現職研修課 指導主事 野村公郎氏
多摩起業家育成フォーラム 老川多加子氏

 研修ではまず始めに、代表取締役石井美鈴氏が起業するまでの経緯や人材育成の取り組みをビデオ上映を交えて紹介し、会社の理念や教育への想いを語った。次に教員が社内を見学してそれぞれが社員に質問して回り、最後に質疑応答を行った。  NCAコンサルティングは、社員が営業・受注したデータ入力や市場調査などの業務を、主婦を中心とする専属の在宅ワーカー(NCAレディ)に発注する仕組みでアウトソーシングを行う。石井氏は専業主婦時代の経験を生かして、あらゆる女性のライフサポートをしていける会社を目指しており、2001年にはライフサポートの部分を充実させる為にビアンカというNPO法人を立ち上げた。
 同社では学生のインターンや企業体験、教員研修者を積極的に受け入れていることから、学生のコミュニケーション能力の絶対的な不足と社会常識のなさをいつも痛感すると言う。現在「就職難」と言われるが、企業はむしろ、組織にすぐなじめる高いコミュニケーション能力を持ち、自分から活発に行動できる優秀な人材ならば喉から手が出るほど欲しいがそれがなかなか見つからない「人材難」の状況を感じている。そこでインターン受け入れ等の活動を通して、環境は自分で切り開くものという姿勢や社会常識を徹底的に教える他、ビアンカのHPを通じて、職業選択や社会参加の糧になる情報を広く提供し、様々なサポートを行っている。石井氏は「教師には、時代の変化に対応していける人材を育てて欲しい」と述べ、教育を含めた様々な活動に携わる経験から切実な想いを教員に伝えた。
 講演後の社内見学では、勤務中の社員に教員が歩き回って自由に質問する場を設けていただくなど、「自分から積極的に参加する」という同社の方針の徹底ぶりが伺われ、教員はそれぞれ興味を引かれた場所に散らばり質問を行った。

〔質疑応答(一部)〕
Q1. 収益を得る為の企業の業務にインターンが携わって失敗したらどう対処するのか?
A1. インターンが失敗しても社内で収まるシステムが確立している。失敗を恐れ、失敗から立ち直れない子が多すぎると感じるので、インターンにはむしろ失敗をどんどんさせ、失敗に学び次に生かそうと立ち直れる人間を育てたいと考えている。
Q2. 学校は事前にあらゆる失敗が起きないようプログラムを組まれて動いている為、子供は失敗慣れせず失敗した時のストレスが大きくなると感じ、勉強になった。こう いったビジネスのやり方を公表して他に真似されないか?
A2. 他者がやろうとしてうちと同じことをできるとは思わないが、できるならばどんどんやって、世の中の多くの人をサポートしていって欲しいと思う。
Q3. リスクを減らさないと今の世の中企業としてやっていけないのではないか?
A3. 守る貯蓄もない所から始めているので攻めていくしかない。リスクを恐れて何もしないより、リスクの先を見てコントロールし、守りに入らない姿勢で行く。

Dキュービーネット株式会社 平成14年9月12日(木) 13:30〜17:00

講演テーマ:「ニュービジネスの創造〜理美容業における視点の変革〜」
講師:代表取締役会長 小西國義氏
参加者:教員18名
同席者: キュービーネット株式会社 取締役営業企画部長 宮崎誠氏
東京都教職員研修センター 研修部現職研修課 指導主事 高田純一氏
多摩起業家育成フォーラム 老川多加子氏

 代表取締役会長小西國義氏のご挨拶の後、会場である本社から歩いて数分の所にある店舗を見学した。近年巷で注目を集める「10分1000円のヘア・カット」の先駆けである理容室QBハウスの店舗内を実際目にしてみると、徹底したデータ管理システムや職員が効率的に動ける内装など「10分1000円」を可能にする独自の仕組みが随所にあり、感嘆する教員の姿が見られた。
 続いて会場に戻り、小西氏が1995年にキュービーネットを設立した経緯やこれまでの苦労、経営の理念などについて講演した。社名のQBはアメリカンフットボールのクォーターバックから取り、業界をたばねたいという想いが込められている。小西氏が昔教師に「コストのかかる鈍行電車よりコストのかからない急行電車の方が乗車料金が高いのはなぜか」と尋ねた時、「それは時間だよ」と教えてくれた一言が時間を考えるきっかけとなって、QBハウスの時間節約というコンセプトにつながった。業界の常識が利用者にとって不利益になっている点に着目し、「何でもやる店」ではなくコンセプトに特化した店を実現させ、多数の利用者のニーズをつかむことに成功した。また、フランチャイズチェーン店の店長を3年で独立させる独立開業制度を設け、スタッフに明確な夢を持たせる工夫をしている。
 小西氏は幼少の頃からの発明好きな性格を下地として、成功を目指す想いとそれを実現する知恵をもってニュービジネスを成功させた経験から、若い人には好きなことを仕事にする可能性を十分に探らせるべきだと考える。これからの時代はゼネラリストよりスペシャリストが求められる時代になると考え、教師や大人が子供の「好き」という大きなパワーを向ける方向を見つけてやることが重要だと述べた。そしてその為にはいつも高い所からものを言うのではなく子供の目線に合わせること、そして感動や夢をできる限り与えて子供の進路のきっかけを作ってあげてほしいと教員へ訴えかけた。

〔質疑応答(一部)〕
Q1. スタッフを独立させるとはどういうことか?
A1. お雇い店長ではなく店のオーナーになってもらう。スタッフは具体的な目標が見えると頑張って働く上、オーナーになれば「自分の店」という意識がサービスや売上を向上させる。親の職業を継ぐことが減る中で私が若いスタッフの社会での親代わりを任じている。
Q2. 良い大学に入った後精神的な問題で休学するなど途中でつまずく子供が多い。成功するまでの失敗という視点から話してほしい。
A2. 人に喜んでもらう成功を念頭に入れてやってきた。失敗に関して気をつけたのは資金面で、一番借り難い所からお金を借り、安易に借りないことを肝に銘じてきた。

E株式会社サンブリッジ 平成14年10月3日(木) 13:30〜17:00

講演テーマ:「人材流動化の時代に求められる人材像」
講師:株式会社サンブリッジ 代表取締役社長 アレン・マイナー氏
参加者:教員19名
同席者: 東京都教育委員会 担当係長 高橋佳宏氏
多摩起業家育成フォーラム 老川多加子氏

 冒頭で各教員が一言ずつ自己紹介を行った。ベンチャー企業を見ることで「現代社会」や「政治経済」の科目を教える素材にしたいという意向や、第二の人生の為の準備としても役立てたいという希望など様々な動機と背景を持って参加する教員の姿が見られ、株式会社サンブリッジ代表取締役社長であるマイナー氏はどの人にも一つでも来て良かったと思える話をできればと語り、会社の紹介を行った。サンブリッジが掲げる"ベンチャー・ハビタット"とは、弱い企業を何とか潰れないようにサポートするというものではなく、また資金面でのサポートだけを行うものでもなく、高いポテンシャルを持つ会社を支援してその可能性を最大限に引き出す為に、起業に最も適した有機的な環境を作り出すことを目指している。様々な人間が一箇所に集まって意見を交換し刺激し合える、シリコンバレーのようなベンチャーのハビタット(生息場所)を作り出したい、というマイナー氏の強い思いからサンブリッジは立ち上がったのだという。
 社内の見学では、隣接する多摩大学の画期的なビジネススクールであるルネサンスセンターやサンブリッジの投資する18〜19社が一堂に会する大部屋を回り、各企業の特色や起業の進度について具体的な話を伺った。
 後半はマイナー氏が、サンブリッジのビジネスモデルや投資先決定の主要因、現在求められる人材像などについて講演を行った。サンブリッジは場所・施設の提供(ハビタット創生)と会社を立ち上げる為の資金提供という2つの機能を組み合わせた相乗効果で利益を上げる独自のビジネスモデルを作り上げた。投資家が投資先を選ぶ時重視する点は、第一に起業家の「熱意」、第二に「誠実さ」といういずれも人そのものに関する要因であるという統計を引き、経営者の個性こそが会社の戦略となることを述べた。また、投資家を悩ませる、伸びもせず潰れもしない"Living Dead(生きた死人)"の状態にある会社が特に日本でいかに多いかという点に触れ、さらに人間レベルでもLiving Deadがあふれている社会に対し、ヒト・魅力・ツキ・ネットワークの4点こそ成功の条件であり、求められる人材であると語った。加えて教える立場にある人には、日本的な倫理を堂々と教えてほしいと述べ、自分に正直な人材を育て、一人一人を大切にした教育を行ってほしいと訴えた。

〔質疑応答(一部)〕
Q1. 倫理を教えるとはどういうことか。
A1. 倫理を教えてはいけないと考える日本人が多い。人間として生きる以上倫理のスタンスを確立して生きるべきであるが、子供の時には家でも学校でも共通である筈の倫理をしっかり教え、どこに行っても迷わないよう悩ませないようにした方が良い。
Q2. 夢を持った情熱のある子供を育てるにはどうすればいいか。
A2. アメリカに必ずあって日本にない授業に「Show & Tell」があり、私達は3歳の時から自分の興味を20人の前で伝達する訓練をしている。Living Deadだらけの生徒では確かに教えるのは辛いが、彼らの知りたい内容と教える内容にずれがあるということで、私ならば、どこかにある筈の生徒の興味を探り接点を見つけていく。

F株式会社ビー・ストーム/マノ精工株式会社 平成14年10月4日(金) 13:30〜17:00

講演テーマ:「企業が求める人材像」「リーダーシップ」
講師:マノ精工株式会社 代表取締役社長 林愛子氏
株式会社ビー・ストーム 代表取締役社長 志村則彰氏
参加者:教員23名
同席者: 株式会社ビー・ストーム 大島龍子氏
東京都教職員研修センター 研修部現職研修課 井上美保氏
多摩起業家育成フォーラム 竹内利明氏

 初めに精密機械部品加工を行っているマノ精工株式会社の代表取締役社長である林愛子氏が「企業が求める人材像」をテーマに講演を行い、自社の人材育成への取り組みを合わせて紹介した。林氏は、「企業の重要な目的は利益を追求することであり、利益が上がらなければ企業は存続できない」という大命題をまず確実に認識した上で、「存在感のある小さな一流企業」を目指して会社づくりに尽力し、中国に押されるものづくりの世界において着実な歩みを続けてきた。とりわけ、企業にとって最も大切なのは「人」であるとの考えから、社員を外部機関に派遣するなどして人材教育に力を入れ、一人一人を育てることでチームワークをも育んでいくことを目指している。林氏は、現在企業が求めている人材として、英語とコンピュータを当然身につけており、さらに@物事の基本を身につけているAコツコツ積み上げられるB積み上げたものに対し集中できるC責任感がある=最後までやる、という条件を備えていることを挙げ、それは企業の大小に関わらず求められることを教員に伝えた。
 次にマノ精工の工場内を見学しながら一つ一つの部品について説明を受け、各部品が細心の心配りで製品として仕上げられていることや作り上げた製品に対する社員の自信と誇りを感じることができた。
 続いて株式会社ビー・ストーム代表取締役社長の志村則彰氏が「リーダーシップ」をテーマに講演を行った。エレクトロニクス革命を端緒に世の中が急速な変化を続ける中を歩んできた志村氏は、その時々の変化を感じ取り、変化を生かしてチャレンジし成功してきた経験から、「ビジネスに携わる者にとっては変化こそ最大のチャンスになる」と悟った。さらに変化にチャレンジして成功するかどうかはひとえに他者との差別化を図れるか否かにかかっている。志村氏自身カシオ計算機時代から、技術プロデューサーとして事業構想を練り急激な技術革新の中で他社との差別化を図ってヒット商品を世に送り出してきた。
 また志村氏は、変化を生かして物を生み出すこうした楽しさや科学の面白みを子供に知らせたいとの思いで、技術の進歩を目の当たりに感じられるよう工夫するなどしながら様々な場で子供に伝え続けている。志村氏はこれまで好きなことをとにかく一生懸命やってきた人生の歩みを振り返り、全ての活動が自分の身となって生きているのを感じており、子供たちにはとにかく好きなことに打ち込んでほしいと語った。また「人をまとめ、説得するのが上手い」という長所を自覚したことで技術プロデューサーとしての道が開けたことから、子供が自分の長所を早く知ってそれが生かせる場所をできるだけ早く見つけて欲しいという思いを教員に語った。
 最後に新しい仕事を生み出す起業家の資質に触れて、「リーダーシップ」とは各時点でのリスクを賭して決断できることである、という考えを示した。 人を育てる姿勢や求めている人材、子供に望むこと等について経営者という立場でどう考えているのか、という貴重な現場の声を聴くことができ、迫力ある講演に聞き入る教員の姿が見られた。

〔質疑応答〕
Q1. レジュメにある「仕事に取り組む姿勢」について説明してほしい。
A1. (志村氏).カシオ計算機に入社10年目の時自分なりの考えをまとめた。「できる/できない」ではなく「必要か/必要でないか」を考える習慣や仕事のできる環境は自分で作り出す姿勢、自分の案をまず持つこと、部下を厳しく叱った後しっかりフォローする覚悟と責任を持つこと、などを心がけてきた。
Q2. 女性の経営者として特に心がけていることや違いなどはあるか。
A2. (林氏).製造業では女性のトップは少なく当初はよくバカにされた。しかし男性の立場は辛いと見ていて強く感じる。言いたいことをぐっと我慢して抱え込む場合が多い。製造業ではまだまだ女性の責任感が弱く育てていくのは非常に難しいが、育てていき、人が互いに思いやれる働き方を実現していきたいと思う。
Q3. 障害者にとって就職先は数少なくパソコンにも縁遠い生活をしているが、マノ精工では受け入れているか。
A3. (林氏).創業当時から年に2人くらい障害者を常に採用してきたが現在は採用していないのではなく採用に慎重になっている。会社はその人の命を預かるという重大な使命を持ってお預かりするので家族の協力がないと絶対にうまくいかない現実がある。
Q4. @失敗してもやろうという気力はどこから湧くのか。Aマノ精工の営業力の秘密は?
A4. @(志村氏).失敗した先まで考えない。自分のやりたいことのストーリを構築し、あとは決断することが重要である。
A(林氏).営業は信頼である。今日のような研修会一つから、きめ細やかな対応を心がけている。
Q5. 多摩地域の産業はどうなっているのか。
A5. (竹内氏).都近郊の重要な産業拠点であり、経済産業省によって「産業クラスター」に指定されている。開発型企業が多く、世界に誇れる技術を持ったニッチトップと言われる企業が多い。大田区の苦戦を見ても分かるように、現在日本は独創性や開発力を問われている。

G森ビル株式会社 平成14年11月12日(火) 13:30〜17:00

講演テーマ: 「都市再生と森ビルのプロジェクト」
 講師:森ビル株式会社広報室上席副参事 安田達雄氏
「森ビルの文化事業への取組みについて〜アカデミーヒルズの事例〜」
 講師:森ビル株式会社 文化事業部 担当部長
               /アカデミーヒルズ事務局長 礒井純充氏
参加者:教員31名
同席者: 森ビル株式会社 文化事業部 工藤雄大氏
東京都教職員研修センター 研修部現職研修課 指導主事 小宮恭子氏
多摩起業家育成フォーラム 老川多加子氏

 まず初めに、森ビル株式会社の広報室の安田氏より、森ビル株式会社の沿革や、森ビルがこれまで手がけてきた主要なプロジェクトの概要が紹介された。その中で安田氏は、森ビルの手がけている事業は、転売などを目的とした「地上げ」とは異なり、都市再生であり、地権者の理解と協力に基づいて進められていることを説明した。
 続いて、文化事業部の礒井氏より、森ビルの手がけている文化事業の一例として「アカデミーヒルズ」の概略が紹介された。森ビルの創業者自身が教育者であったこと、また「街づくりは人づくり」というコンセプトの下、森ビルでは「教育・研究・事業」を3つの柱とするアカデミーヒルズを六本木のアークヒルズで運営している。アカデミーヒルズは、都心での高等教育の場として、複数の大学との共同事業の形で、ビジネス・パーソンを対象とした様々な講座や、都市政策・ITなどに関しての政策提言などの研究事業、さらには研究成果の事業化を推進する場である。一つの大学や一つの学部ではできないことを、様々な人的ネットワークをベースに幅広く展開している。さらに、教育事業とはサービス業であり、少なくとも社会人に対しては「ティーチングでなくラーニング」という顧客志向が成功の要であること、また、公的機関の提供する教育を含めたサービスのある部分は民間でも提供できるものであり、森ビルとしても意欲的に取り組んでいることが示された。日ごろの観点とは異なった視点での民間企業の教育事業への取組みに対し、参加教員の関心も高かったようである。
 さらに、同社の研究成果の一つである東京都港区とニューヨークの立体模型を前にして、広報室の安田氏より、東京の都市としての問題点やそれに対しての森ビルの考え方、取組が話された。ニューヨークと比して、土地の有効活用の割合が低く、また道路幅や区画が狭小であることは、立体模型を前にすれば歴然であり、模型の精緻さもあいまって、参加教員にとっては印象に残るものであったようである。

〔質疑応答(一部)〕
Q. 教育や文化事業は儲からないと思うが取り組んでいるのはなぜか?
A. 施設を貸し出すなどの仕組みでトータルで採算を確保する仕組みはある。また、直接的な利益だけでなく、人的ネットワークなど様々なメリットがある。
幕ニは儲からないと思うが取り組んでいるのはなぜか? A. 施設を貸し出すなどの仕組みでトータルで採算を確保する仕組みはある。また、直接的な利益だけでなく、人的ネットワークなど様々なメリットがある。